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クラフトビールシーンを席巻する「ヘイジーIPA(HAZY IPA)」。
その名の通り霞みがかった美しい外観と、まるでフルーツジュースのようなジューシーな味わいは、ビール愛好家はもちろん、これまでビールが苦手だった人々をも魅了しています。
この記事では、ヘイジーIPAの基本情報から、その独特な特徴、製法、そしておすすめの銘柄と実売価格まで、ヘイジーIPAの世界を深く掘り下げていきます。
ヘイジーIPAとは?その起源と多彩な呼び名
ヘイジーIPAは、IPA(インディア・ペールエール)から派生したビアスタイルの一つで、その最大の特徴は「Hazy(ヘイジー)」つまり「濁った」見た目にあります。2000年代初頭、アメリカのバーモント州にあるクラフトブルワリー「The Alchemist(アルケミスト)」が生み出した「Heady Topper(ヘディートッパー)」という無濾過・低音殺菌のIPAがその起源とされています。このビールが持つ、濁った外観と確かな美味しさが評判を呼び、同様のスタイルがアメリカ東海岸を中心に広がりました。
その発祥地であるアメリカ北東部のニューイングランド地方にちなんで「ニューイングランドIPA(New England IPA、NEIPA)」とも呼ばれるほか、これまでの苦味の強いウェストコーストIPAに対して「イーストコーストIPA」、そしてその味わいの特徴から「ジューシーIPA」といった複数の別称を持っています。
日本でも2017年頃から人気が高まり、今やクラフトビールシーンに欠かせない存在となっています。
ヘイジーIPAの際立つ特徴:五感を刺激する魅力
ヘイジーIPAが多くの人々を惹きつける理由は、そのユニークな特徴にあります。
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① 濁った美しい外観
ヘイジーIPAの最も象徴的な特徴は、オレンジ色や黄色に濁った「Hazy」な見た目です。
この濁りは、意図的に残された酵母や、製造工程で使用されるホップの成分(ポリフェノール)、そしてタンパク質を豊富に含むオーツ麦や小麦といった原材料が結合することによって生まれます。
この濁りが、視覚的にも柔らかな印象を与えます。
② 苦味控えめでフルーティー&ジューシーな味わい
従来のIPAがホップの強い苦みを特徴とするのに対し、ヘイジーIPAは苦みが格段に抑えられています。
その代わりに、マンゴー、パイナップル、オレンジ、グレープフルーツといったトロピカルフルーツや柑橘類を思わせる、華やかでジューシーなフレーバーが前面に出ています。
まるでフレッシュジュースのような飲みやすさで、ビール初心者や苦味が苦手な方にも好評です。
③ なめらかでクリーミーな口当たり
オーツ麦や小麦を多く使用することで、タンパク質がビールに豊かなボディとクリーミーでシルキーな口当たりをもたらします。このなめらかな舌触りが、ジューシーなフレーバーと相まって、非常に飲み心地の良いビール体験を生み出しています。
④ 芳醇なホップアロマ
苦味は控えめながらも、ホップの持つ華やかな香りは存分に楽しめます。後述する「ドライホッピング」という製法により、ホップの持つ香り成分がビールに最大限に移され、グラスに注いだ瞬間から豊かなアロマが立ち上ります。
⑤ 幅広いアルコール度数
ヘイジーIPAのアルコール度数は、4%程度の軽やかなものから9%を超える飲みごたえのあるものまで幅広く存在します。これにより、シーンや好みに合わせて様々なヘイジーIPAを選ぶ楽しみがあります。
伝統的なIPAとの違い
ヘイジーIPAと伝統的なIPA(特にウェストコーストIPA)の主な違いをまとめると以下のようになります。
特徴 | ヘイジーIPA (NEIPA)(ジューシーIPA) | 伝統的なIPA (ウェストコーストIPAなど) |
見た目 | 濁っている(オレンジ、黄色) | クリア(透明感のある琥珀色など) |
苦味 | 控えめ | 強い |
香り | フルーティー、ジューシー(トロピカル、柑橘系) | ハーブや紅茶、柑橘系やパインの香り(苦味と調和) |
口当たり | なめらか、クリーミー、ソフト | ドライ、クリスプ |
ホップ添加 | 発酵後期(ドライホッピング)が主体 | 煮沸時が主体 |
主な原料 | 大麦麦芽に加え、オーツ麦、小麦を多用 | 主に大麦麦芽 |
ヘイジーIPAを造る製法の秘密
ヘイジーIPAの独特なキャラクターは、その製造方法に秘密があります。
ドライホッピング
最も重要な製法が「ドライホッピング」です。
通常のビールでは、ホップは麦汁を煮沸する工程で投入され、苦味成分(アルファ酸)が抽出されます。
しかし、ヘイジーIPAでは、煮沸時のホップ使用を抑えるか、あるいは全く使用せず、代わりにビールの主発酵後や発酵の終盤といった低温の段階で大量のホップを投入します。
熱を加えないことでホップの苦味成分の抽出を最小限に抑え、香り成分(エッセンシャルオイル)だけを効率よくビールに移すことができるのです。
これにより、苦味は少ないながらもホップの華やかな香りが際立つビールが生まれます。
ホップの種類
使用されるホップも、ヘイジーIPAのフルーティーな個性を形成する上で重要です。
シトラ、モザイク、ギャラクシー、アマリロといった、トロピカルフルーツや柑橘系のキャラクターが強いアメリカ産やオーストラリア・ニュージーランド産のホップが好んで使用されます。
オーツ麦と小麦の使用
大麦麦芽だけでなく、タンパク質やβグルカンを多く含むオーツ麦や小麦を積極的に使用するのも特徴です。
これらが濁りを生み出す要因の一つになるとともに、ビールにシルクのような滑らかでクリーミーな口当たりと、豊かなボディ感を与えます。
酵母の選定
ヘイジーIPAには、フルーティーなエステル(香り成分)を生成する特定の酵母が用いられることがあります。これらの酵母はビールに複雑な風味を加えるだけでなく、ビール中に浮遊しやすく、濁りの一因ともなります。
おすすめのヘイジーIPA:国内外の人気銘柄と実売価格
国内外のブルワリーから、個性豊かなヘイジーIPAが数多くリリースされています。ここではその一部をご紹介します(価格は変動する可能性があります)。
国内の注目ヘイジーIPA
伊勢角屋麦酒「ねこにひき」ヘイジーIPA
特徴:日本のクラフトビール審査会「JAPAN BREWERS CUP」での受賞歴もある人気商品。パッションフルーツや柑橘を思わせるジューシーなアロマと優しい甘みが特徴です。
アルコール度数:約6.5%
実売価格帯:1本あたり約800円前後。24本ケースで13,600円(税込)。

FAR YEAST BREWING「Far Yeast Hop Frontier -Juicy IPA-」
特徴:最新のホップ理論と先進的な醸造手法でホップアロマを追求。
パイナップルやオレンジのようなトロピカルなフレーバーが楽しめます。
アルコール度数:6.5%
実売価格帯:1本あたり約720円前後。

ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」

特徴:本サイトの関連記事でもご紹介している、人気のクラフトビール。パイナップルやマンゴーを思わせる香りとシルキーな口当たりが楽しめます。
(詳細は関連記事 有頂天エイリアンズ をご覧ください)
セブン&アイ限定のクラフトビール「有頂天エイリアンズ」を徹底解説!ヤッホーブルーイングと共同開発したトロピカルな香りとまろやかな口当たりのヘイジーIPA。特徴、味、価格、おすすめの飲み方まで詳しくご紹介します。
海外の人気ヘイジーIPA
BREWDOG「HAZY JANE(ヘイジージェーン)」
特徴:スコットランドの人気ブルワリー、ブリュードッグの定番ヘイジーIPA。柑橘系のすっきりとした味わいとまろやかな口当たりが特徴です。
アルコール度数:5.0%
実売価格帯:1本あたり約600円~700円前後。

Stone Brewing「Stone Hazy IPA(ストーン・ヘイジーIPA)」
特徴:アメリカ西海岸のIPAの雄、ストーンブリューイングが手掛けるヘイジーIPA。
アルコール度数:6.7%
実売価格帯:1本あたり約880円前後。

Sierra Nevada「Hazy Little Thing(ヘイジーリトルシング)」
特徴:アメリカの老舗クラフトブルワリー、シエラネバダのヘイジーIPA。バランスの取れたフルーティーさが魅力です。
アルコール度数:6.7%
実売価格帯:1本あたり約770円前後。

New Belgium Brewing「Voodoo Ranger Juicy Haze IPA(ブードゥーレンジャー ジューシーヘイズIPA)」
特徴:トロピカルな風味とシトラスの香りが際立ち、ドライな飲み口ながらしっかりとした味わい。
アルコール度数:7.5%
実売価格帯:1本あたり約700円~800円前後。
この他にも国内外の多くのブルワリーが魅力的なヘイジーIPAを醸造しています。
ヘイジーIPAを最大限に楽しむために
ヘイジーIPAの魅力を存分に味わうためのポイントをご紹介します。
適切な温度管
冷やしすぎると香りが閉じこもってしまうため、7℃~10℃程度がおすすめです。飲む少し前に冷蔵庫から出しておくと良いでしょう。
グラス選び
豊かなアロマをしっかりと感じるためには、口がすぼまったチューリップ型や、大ぶりなワイングラスなどが適しています。

注ぎ方
缶や瓶の底に酵母やホップの成分が沈殿していることがあります。
これらも味わいの一部なので、グラスに注ぐ際は優しく撹拌するように注ぐか、最後に少し揺らして注ぎ切ると良いでしょう。
料理とのペアリング
スパイシーなエスニック料理、柑橘系のドレッシングを使ったサラダ、クリーミーなチーズ、フルーティーなデザートなどとの相性が抜群です。
ヘイジーIPAのフルーティーさが料理の風味を引き立てます。
ヘイジーIPAの未来とトレンド
ヘイジーIPAの人気はとどまることを知らず、さらなる進化を続けています。
より低アルコールで飲みやすい「セッションヘイジーIPA」や、逆にアルコール度数を高め、より濃厚な味わいを追求した「ダブルヘイジーIPA」「トリプルヘイジーIPA」なども登場しています。
また、使用するホップの組み合わせやドライホッピングのタイミングなど、ブルワーたちの探求心は尽きることがありません。今後も驚きと感動を与えてくれる新しいヘイジーIPAが登場することでしょう。
まとめ:ヘイジーIPAで新しいビールの扉を開こう
濁った見た目、華やかな香り、ジューシーな味わい、そして滑らかな口当たり。ヘイジーIPAは、これまでのビールの概念を覆す、まさに新時代のクラフトビールです。
苦味が少なく飲みやすいため、ビール初心者の方や、普段あまりビールを飲まない方にもぜひ試していただきたいスタイルです。
この記事を参考に、あなたのお気に入りのヘイジーIPAを見つけて、その奥深い魅力に触れてみてくださいね!
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