
岩手県二戸市の老舗酒蔵「南部美人」が醸す「雄三スペシャル」は、日本酒愛好家の間で熱い支持を集める特別なシリーズです。
蔵元の次男であり常務を務める久慈雄三氏が「自分が本当に飲みたい辛口の食中酒」を追求し、燗酒でこそ真価を発揮する味わいを実現しています。
本記事では、この個性豊かな「雄三スペシャル」の全貌を、ラインナップ、実売価格、味わいの特徴から最適な飲み方まで、詳しく解説していきます!
南部美人「雄三スペシャル」開発の背景とコンセプト
南部美人「雄三スペシャル」は、久慈雄三氏の「毎日でも飲みたい、お燗で美味しい純米の食中酒」という熱い想いから誕生しました。
従来の南部美人が持つ「冷やで美味しい」というイメージとは一線を画し、「究極の食中酒」として、食事と共に楽しむこと、そして燗をつけることでそのポテンシャルが最大限に引き出されることを目指しています。
モロミの完全発酵を心掛け、米の旨みを余すところなく引き出すことを重視しており、その結果、穏やかな米の香りと厚みのある落ち着いた味わいが生まれます。
一度飲んだら忘れられない、心に響く旨さがこのシリーズ最大の魅力と言えるでしょう。
主要ラインナップと実売価格・スペック
「雄三スペシャル」シリーズは、使用する酒米や製法によって多様なバリエーションが存在します。ここでは代表的な銘柄を紹介していきます。
商品名 | 原料米 | 精米歩合 | アルコール度数 | 日本酒度 | 酸度 | 実売価格(税込) | 特徴 |
雄三スペシャル(番外品) | 等外米 | 非公開 | 14度 | – | – | 2,310円前後 | スッキリ辛口、コスパ抜群、家庭料理と気軽に楽しめる |
雄三スペシャル 愛山 純米酒 | 愛山 | 60% | 16度 | +3~+7 | 1.7~1.8 | 3,795円前後 | 愛山の甘みとバランスの良さ、燗で優しく変化、IWC受賞歴あり |
雄三スペシャル 雄町 純米酒 | 雄町 | 60% | 15度 | +3 | 1.8 | 3,080円前後 | 柔らかな旨味とキレ、常温~ぬる燗で旨さ倍増、オールマイティ |
雄三スペシャル 無添加生もと 純米酒 | 非公開 | – | – | – | – | 3,850円前後 | 酵母無添加、蔵付き微生物による醸造、個性の塊 |
雄三スペシャル 純米吟醸 (黒) | 美山錦 | – | – | – | – | 2,310円前後 | シリーズ初の純米吟醸スペック |
雄三スペシャル(番外品)
南部美人「雄三スペシャル(番外品)」は、等外米(規格外の酒造好適米)を使用することで、リーズナブルな価格を実現しながらも、上質な酒米のポテンシャルを最大限に活かしたお酒です。
アルコール度数14度と低めに設定され、スッキリと軽やかな辛口の味わいが特徴で、家庭料理と気軽に楽しめるよう設計されています。
穏やかな米の香りと心地よい口当たりで、冷酒から40度前後のぬる燗まで幅広い温度帯で楽しめる万能性も魅力です。
毎年3月頃に入荷する季節限定品で、コストパフォーマンスに優れた「雄三スペシャル」シリーズの入門酒として、日々の晩酌に最適な一本です。
雄三スペシャル 愛山 純米酒
南部美人「雄三スペシャル 愛山 純米酒」は、酒米「愛山」の特徴である上品で心地よい甘味を活かし、甘味・旨味・酸味のバランスが絶妙に調和した食中酒向けの一本です。
日本酒度+3~+7、酸度1.7~1.8、アルコール度数16度の仕様で、しっとりと円やかな味わいが特徴。
冷酒でも美味しく楽しめますが、温度を上げることで愛山の優しい甘味がより際立ち、飲みやすさがアップします。
特に熱々に温めてから少し冷ます飲み方がおすすめで、香りが立ちやすくなります。
「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2023」純米酒部門で銀メダルを受賞するなど、国際的な評価も高く、前述の番外品とともに、雄三スペシャルシリーズの入門酒としても最適です。
雄三スペシャル 雄町 純米酒
南部美人「雄三スペシャル 雄町 純米酒」は、酒米「雄町」を60%まで精米し、7号酵母を使用して仕込んだお酒です。
柔らかな口当たりからまろやかな旨味がじんわりと広がり、後口にはスマートなキレと辛さが感じられます。
日本酒度+3、酸度1.8、アルコール度数15度の仕様で、甘味・酸味・旨味のバランスが絶妙に調和。冷酒でも美味しく楽しめますが、常温からぬる燗にすることでさらに旨味が引き立ち、オールマイティに楽しめる純米酒として評価されています。
コストパフォーマンスも高く、晩酌酒にも最適な一本です。
雄三スペシャル 無添加生もと 純米酒
南部美人「雄三スペシャル 無添加生もと 純米酒」は、蔵元の次男・久慈雄三常務が手掛ける最も個性的な一本です。
酵母を添加せず、蔵に棲み付く微生物の力だけで醸造された、まさに「個性の塊」とも言える特別な純米酒。
精米歩合50%、アルコール度数16度、日本酒度-3、酸度1.9という仕様で、通常の南部美人とは全く異なる味わいを持ちます。
口当たりはマッタリとしており、子供の頃に食べたキャラメルのような素朴で懐かしさを感じる味わいが特徴的。
その尖った個性に心を鷲掴みにされるファンが多く、一口飲むと雄三ワールドに引き込まれます。チーズや乳製品との相性も抜群で、軽く冷やしても美味しいですが、50~55度の熱燗で真価を発揮します。
開栓後も成長し続ける味わいの変化も楽しめる日本酒です。

雄三スペシャル 純米吟醸 (黒)
南部美人「雄三スペシャル 純米吟醸」は、雄三スペシャルシリーズ初の純米吟醸スペックとして醸造されたお酒です。
原料米に美山錦を55%まで精米し、アルコール度数16度、日本酒度+3、酸度1.8の仕様で仕上げられています。穏やかで控えめな吟醸香が特徴で、美山錦の甘味や旨味が複雑に入り交じった奥深い味わいを楽しめます。
このお酒の最大の魅力は、飲み方の多様性にあります。常温や冷酒でも美味しく楽しめますが、燗酒にして自分好みの温度を探すのもおすすめです。
ラベルの中央から放射線状に描かれたデザインは、この酒を飲んだ時に味わう感覚を可視化したもので、酒の味わいからその時の会話、場の空気感まで表現しています。
通を唸らせる一本です。

「雄三スペシャル」を最大限に楽しむために
燗酒の魅力と実践方法
「雄三スペシャル」の醍醐味は、何といっても燗酒にした際の味わいの変化です。
冷酒や常温ではシャープに感じられる味わいが、温めることで角が取れ、米本来の旨味や甘みがふくらみ、驚くほど円やかで染み渡るような美味しさに変わります。
- おすすめの燗の付け方
- 徳利にお酒を注ぎます。
- 鍋にお湯を張り、徳利ごと湯煎します。火を止めて余熱で温めるか、ごく弱火でゆっくりと温めます。
- 徳利の底を触って温度を確認し、好みの温度(40度前後のぬる燗が一般的におすすめ)になったら引き上げます。
熟成による変化も楽しむ
「雄三スペシャル」は、出来立てが完成形ではなく、瓶内での熟成によっても味わいが成長していくポテンシャルを秘めています。
購入後すぐだけでなく、少し時間を置いてから味わうことで、また異なる魅力に出会えるかもしれません。
料理とのペアリング
「究極の食中酒」をコンセプトとする雄三スペシャルは、様々な料理との相性が抜群です。
- 番外品:日常の家庭料理全般。焼き魚、野菜炒め、煮物など。
- 愛山:純米酒: 甘みと旨味のバランスが良いため、出汁を使った和食、鶏肉料理、少し甘みのある味付けの料理とも好相性。
- 雄町:純米酒: 肉料理、中華料理、チーズなど、しっかりとした味わいの料理にも負けない旨味があります。鍋物にも。
- 無添加生もと 純米酒:ジビエ料理、発酵食品(熟成チーズや癖のある珍味など)、スパイスを使った料理など、個性的な料理と合わせるのも一興です。
入手方法について
「南部美人 雄三スペシャル」シリーズは、その多くが限定品として流通しています。そのため、見かけた際には早めの購入がおすすめです。主な購入場所は以下の通りです。
- 全国の「南部美人」特約酒販店
- 一部オンラインショップ
入荷時期は商品によって異なり、例えば「雄三スペシャル(番外品)」は3月頃に入荷することが多いようです。
まとめ
南部美人「雄三スペシャル」は、造り手である久慈雄三氏の情熱とこだわりが詰まった、燗酒でこそ輝きを増す個性派の日本酒シリーズです。
多彩なラインナップはそれぞれに異なる魅力を持ち、飲む温度や合わせる料理によって無限の表情を見せてくれます。
コストパフォーマンスに優れた番外品から、酒米の個性を活かした純米酒、そして唯一無二の生もと造りまで、あなたの好みやシーンに合わせて選ぶ楽しみがあります。
ぜひ、この「雄三スペシャル」で、奥深い燗酒の世界と、食事がより豊かになるマリアージュ体験を堪能してみてください!
【関連記事】
